Forum2050通信2024年9月号

JICA 教育協力ウィーク2024の登壇者たち
目次

【教育協力ウィーク2024 開催報告】

Forum2050の板谷です。私は現在、国立大学で勤務する傍ら、高校生の娘と共に親子でForum2050の活動に参加しています。

今回、JICA教育協力ウィーク2024においてForum2050は「日本と世界のこどもたちがつながり共創する未来―そのために私たちができることは?―」というテーマで団体初の全員で行うイベントを開催しました。このイベントは、年齢や職業関係ない様々な立場の人が登壇し、会場やオンライン参加の方も質疑応答できる双方向のセッションとなりました。JICA事務局の方々からも、小学生や高校生が登壇するという点で、これまでにない斬新なセッションだと評価され、教育協力ウィーク2024全体にとっても非常に刺激的な内容だったとの感想をいただきました。

〈参加者アンケートの一部をご紹介します〉

  • 大人と子ども、いろんな人が混じって考えるときっと日本も世界も少し変わっていくのかなと思いました。(JICA職員)
  • 小学生から国際協力に携わる方々から、それぞれの経験や考えを一度に聞くことができて良かった。(官公庁)
  • 自分が子どもの頃からこのような機会に参加できていたらよかったなと思います。高校生の方もおっしゃっていた通り、自分の事として、平和についてこれから考えていこうと思いました。未来をつくる若い世代と、大人の世代みんなで取り組んでいくべきことだと思いました。(官公庁)
  • 司会含めて、若い世代が会を回されて、素晴らしいと思いました。真剣に取り組むことへの主体性や意欲を感じました。様々な世代が対等に話し合う場を持つことに意義を感じました。(民間企業)

一方で、「開催時期や時間に制約があり、参加が難しい」といった意見もありました。これらのフィードバックを今後のイベント運営に生かしていきたいと思います。

では、セッションの様子、順を追って皆様にご紹介させていただきます。

JICA 教育協力ウィーク2024の登壇者の子どもたち

小学生から高校生メンバーがそれぞれ自由に自分の言葉で想いを発信

最初に、JICA職員の松山様と畔上様による共同基調講演がありました。お二人は教育協力と開発教育の実務を長年担当されており、現場での課題と、それを克服するための取り組みについて熱意をもってお話をしてくださいました。次に、横浜市の国際交流事業に携わる前田様が、自治体の視点から国際協力についての展開や課題についてご講演されました。どちらの講演も、実務に基づいた視点からの話で説得力のあるものでした。

バングラデシュからオンラインで参加の副代表よりコメントと現地の大学生からのメッセージを流す様子

続いて、バングラデシュにいる当団体の副代表が、現地の若者たちのリーダーシップや国を動かす力についてお話ししました。バングラデシュでは現在、若者たちが中心となって歴史的な変革を進めています。その彼らのリアルな声を集めたインタビュー映像を会場で流したところ、歴史的な背景から複雑化した問題に関して学生自身がどう動いていくのか、という点で非常に重く深い内容で、会場全体の参加者が真剣な表情で見入っていました。

JICA 教育協力ウィーク2024の登壇者たち
未成年メンバーの意思を尊重し、対等な目線で真剣に話しあう様子

未成年メンバーの意思を尊重し、対等な目線で真剣に話しあう

次に、次世代の視点からとして、当団体の最年少メンバーの貫慈くん(小5)、ルワンダ留学をした明香凛さん(高3)、司会の真綾さん(高1)による平和な未来についての想いを自由にそれぞれ語りました。「自分ごととして知ることから始める」「今ある平和の土台を固めていきたい」というメッセージ等を発信し、会場の大人も大きく頷いていました。その後、登壇者によるパネルディスカッション、会場やオンラインからの質疑応答、最後に当団体監事の植嶋から総括でイベントを締めくくりました。

セッション終了後、年の差があっても関係なく真剣に議論
オンサイトの方と最後に記念撮影

今回のイベントを通じて、平和な未来を共に創り出すためには、国際理解が非常に重要であると再認識できました。

特に、次世代を担うこどもたちが異なる文化や価値観を理解し合い、共に考える機会を持つことは、未来の平和な社会を築くための大きな基盤となると感じています。そして、今あるあたりまえの中に沢山の平和と幸せがあることにも気がつき笑顔が連鎖していくようなイベントを今後も企画運営していきたいと思っています。

板谷恵子


【イベント案内】

2024/10/8(火) 愛知県瀬戸市教員向け講演会

2024/10/9(水) 埼玉県和光市第二中学校にて全校生徒対象に講演会と対話

2024/10/10(木) 新潟県長岡市東中学校にて出前講座

2024/12/14(土) 武蔵高等学校中学校『RED』プログラムにて講演会と対話

【イベント結果についてのお知らせ】

教育協力ウィーク2024でのForum2050セッション

2024年9月2日(月)から9月13日(金)期間で「教育協力ウィーク2024」が開催。
日時:9月6日(金)17:00-18:30 「Forum2050 日本と世界のこどもたちが、つながり、共創する未来」
場所:国際協力機構(JICA)本部対面およびオンラインのハイブリッド形式
当日の様子をサイト等でも配信していく予定ですので、楽しみにして下さい。

【副代表 庄子明大より】

本団体二人目の副代表、庄子です。Forum2050で事業の企画・推進・連携を担当しています。いつもForum2050の理念と活動へご理解とご支援をいただき誠にありがとうございます。私は現在、本業の国際協力・開発の仕事で南アジアのバングラデシュに駐在しています。同国は人口約1億7千万人、平均年齢28歳、独立してまだ53年で若さと活気に満ちており、これからが期待されている新興国です。私は同国での駐在が通算14年ほどと長くなってきています。同国と共に歩みながら、本団体の掲げる「子どもたち一人ひとりの未来への想いが人類の未来を創る」を実践しようと本業の傍ら、同国の子どもたちと向き合い、世界の子どもたちが繋がり合うお手伝いをしていこうと努めています。

さて、そんな新興国バングラデシュですが、最近、大きな政変が起こりました。学生運動に端を発する政権崩壊です。本稿では同国の若者が立ち上がって独裁的だった政権を倒すまでをご紹介します。

きっかけは1971年の建国時に元は同じ国であったパキスタンから独立するために戦った独立戦争兵士の家族への公務員採用優遇制度(公務員採用時に全体の30%を独立戦争兵士やその家族とする制度)に対する是正運動でした。既に建国から50年以上が経つ中で、戦争で血を流した方々や親族への採用優遇は既得権と化し、2018年には同じく当時の学生たちの大規模な抗議行動によって一度は廃止されました。しかし、裁判所は今年6月に同制度を復活させる決定をしました。同国では2008年以来、同じ政党(アワミリーグ党)が独裁的に権力を行使し、同じ首相が15年以上その座を圧倒的な力で保持していました。従い、裁判所の決定と言っても国民の殆どは司法の独立を信じておらず(国民は同じくジャーナリズムも警察も信じていない人が多い)、与党がまた独断的に制度を復活させたと確信していました。

司法が政治によって捻じ曲がることなど日常に溢れすぎていたからです。また、独立戦争の兵士親族を採用するという名のもとに政治家等権力者が賄賂を受け取って兵士親族を装わせて公務員採用させること、あるいは兵士親族としての承認プロセスそのものに賄賂が絡むことなどに国民は辟易していたのです。そこで7月に入ってから大学生を中心とした若者が再度立ち上がり、公平で公正な公務員採用を求め、採用枠をなくせとは言わないがせめて5%程度に縮小せよ、と大きな声を上げてデモを行いだしました。

WEBサイト「Wikipedia」“2024 Bangladesh quota reform movement(2024年8月27日時点)”より

この声は最高学府ダッカ大学のみならず他の多くの大学に伝播し、デモに参加する学生は数千人から数万人、そして数十万人へと増えていきました。その声に当時の首相は「皆さんは独立戦争の兵士親族を採用せずに(独立時にパキスタン側で動いた)”裏切り者”の親族を雇えとでも言うの?」と嘲笑し、与党幹事長はこれ以上騒ぐなら強行措置を取ると脅したのです。そして実際に全国で悪名高き与党の過激支持者グループ(党員ユースグループ)が学生運動グループを暴力で襲い始めたのが7月16日頃からでした。学生たちも負けじと木の棒や投石で応戦するような光景が全国で多発し、報道され、双方を支援するために学生やその支援者、与党支持者が全国に溢れ出し、その攻防に治安当局が武力鎮圧を試みたことからそこに反体制派も流れ込んで一気に過激化し、政府機関の焼き討ちや刑務所への襲撃や脱獄も発生するなど7月18日には全国で収拾がつかないくらいの状況となり、政府はある政府機関が襲撃されたことを技術的理由としてインターネットの全国”全遮断”を行い、国は7月19日零時から戒厳令(外出禁止令)を出し、混乱状態はピークとなりました。

WEBサイト「The Daily Star」” One demand now (2024年8月4日)”より

インターネットは1週間後には少しずつ回復し出しましたが、インターネット遮断や乱暴な鎮圧方法は経済や日常を破壊し、もはや公務員採用制度の問題ではなくなり、学生運動のうねりは反体制・倒閣運動に変わっていきました。何よりインターネットが復旧したことで多くの無辜の学生や市民が犠牲になったことも明らかになり、国民の怒りは頂点に達しました。8月2日頃からの改めての盛り上がりは国民の覚悟あるところとなり、学生のみならず多くの大人も街頭に出始めて膨らみ続け、治安活動に当たる警察を群衆が襲い出す事態となり、全国各地で警察が逃げ出す無秩序状態になりました。こうなると軍が治安活動に当たるべきなのかもしれませんが、軍は全国の要所を守るものの中立的な立場に終止し、群衆の暴徒化は止まらず全国で死傷者が数百名(後に国連人権報告書では死者650名とも)にのぼり、いよいよ8月5日には当時のシェイク・ハシナ首相が妹と共に軍のヘリコプターでインドへ脱出するに至り、政権は崩壊となりました。ハシナ前首相は象徴的権威である大統領へ辞意を表明して去りましたが、逃げ遅れた他閣僚や国会議員はその後続々と潜伏先や脱出しようとした空港などで拘束され続けています。

8月5日夕方には陸軍トップが会見を開き、ハシナ前首相が辞意を表明して国外脱出したこと、軍や残った政党と学生運動家が話し合って近日中に暫定政権(Interim Government)を組成することなどが発表されました。暫定政権の組閣において当初は元中央銀行総裁を首席顧問(Chief Advisor=首相代理)とし、元行政官や学者・ジャーナリストがリストアップされていましたが、本学生運動を率いた団体の主流派から2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏(NGOグラミン銀行の元総裁)を首席顧問とし、学生活動家も入閣するよう強い意見が出されました。軍や他党もその意見を強い民意と受け入れ、ユヌス氏を首席顧問とし、大臣と同格となるアドバイザーとして2名の学生活動家(二人とも26歳のダッカ大学生)が入閣しました。

EBサイト「The Business Standard」”Dr Yunus-led interim govt legal: SC(2024年8月9日)”より 暫定政権発足時の入閣者リストで、左上大写真がユヌス首席顧問、下段右端から2名が学生活動家

今回のバングラデシュ政変において学生や若者が果たした役割は大きく、革命の端緒を開き、革命後の道筋を決めていく暫定政権の長を決め、その政権においても2名が入閣を果たして国家運営に直接関与していくこととなりました。

この課程において多くの血が流れ、暴力や復讐や略奪が横行したことは大変心苦しいことで、とても他国に勧められるようなプロセスではありません。しかし、学生たちや若者を中心にこれ以上権力者の横暴は許さないと立ち上がり声を上げ続けたこと、それに大人も呼応して立ち上がったこと(一部悪い意味でこのムーブメントに乗っかって暗躍した反体制過激派の存在もあったでしょうが)は未来への希望です。本団体Forum2050の理念にも重なるところがあります。

この革命がこの国の未来の混沌のはじまりとならないよう、挙国一致して権力の集中を防ぎ、汚職を撲滅し、より善き国作りの道筋を描き、そして皆で必死に汗をかいていけるよう、私も微力に過ぎますが尽くしていきたいと考えています。(了)

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Forum2050は、「世界のこどもたち 一人ひとりの未来への想いが人類の未来を創る」をコンセプトに、企業や学校、教育機関等と連携しながら、子どもたちと共に未来の人類社会の平和と発展について、子どもたちが考えるきっかけを創造しています。

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