Forum2050通信2025年10月号

ご支援者の皆さま

こんにちは。
Forum 2050広報担当の駒走(こまばしり)拓三です。

日本では、すっかり秋も深まってきたと思いますが、ここカンボジアでは相変わらず暑い日が続いております。さて、日本ではあまり報道されていないのでご存じない方も多いかもしれませんが、今カンボジアではタイとの国境紛争が起きており、両国にとって深刻な悩みの種となっています。本紛争は、8月に入ってASEAN議長国であるマレーシアが仲裁に乗り出し、トランプ大統領も停戦を呼びかけたことから事態は沈静化に向かいました。しかし、いまだに燻り続けています。ベトナム戦争終結から50年、平静だった東南アジアで、新たな戦争が起きたと言われており、今後も目が離せない状況です。

きっかけは、今年の5月に両国の国境沿いにあるプレア・ビヒア寺院周辺で、両軍の小競り合いがおき、1名のカンボジア兵が亡くなったことです。同寺院は、国際社会でもカンボジアの領土であると正式に認知されていますが、タイ側は納得していないようです。その後も小競り合いは散発していましたが、7月に入って大規模な衝突に発展しました。タイ軍はF16戦闘機を出撃させてカンボジア側の軍事拠点を攻撃し、国境での小競り合いを超えて戦争と言ってよい状態に発展しました。

現在、プノンペンは平和そのもので何事もないように見えますが、タイからの輸入品が止まったり、タイ資本のガソリンスタンドやコンビニに客が入らなくなったり、国内最大のイベントでもある水祭りのボートレースが中止されたりと、国内に不穏な空気が漂いはじめています。また、タイに出稼ぎに出ていたカンボジア人30万人か帰国を余儀なくされ、いまだに多くの人が職をえられない状況です。前回のメルマガ(9月号)で、日本ウクライナ友好協会 KRAIANY 副理事長イーゴルさんは、「平和を失う出来事は、誰にとっても突然訪れる可能性があります」と教えてくれました。また、「日本の若い皆さん。どうか、いつか「平和を取り戻さなければならない」状況にならないように、今この時から、そのかけがえのない平和を守り続ける努力を重ねてください。」というメッセージを送ってくれています。

2024年11月の水祭りで実施されたボートレース。2025年は中止が決定。
2024年11月の水祭りで実施されたボートレース。2025年は中止が決定。

さて、2025年メルマガ10月号は、9月に行われた「第5回教育協力ウィーク」にて、特定非営利活動法人Forum2050主催による体験型ワークショップ「次世代と考える『自分ごと』としての平和」に関するご報告、学生メンバーの三好華さんによるメッセージ、そして代表の戸田からの月例報告となります。

メルマガに対する質問、ご意見ありましたらメール等でお知らせください。こんなことが知りたいなどのご要望も大歓迎です!

目次

―今回のニュースレターのトピック―

  1. 【団体活動実績】
  2. 【イベント開催報告】
  3. 【メンバーからのメッセージ】
  4. 【Forum2050代表 戸田隆夫からの月例報告】

団体活動実績

10月の主な活動は以下のとおりでした。

8日 名古屋大学で講義
18日   和光市第3中学で講演

イベント開催報告

教育協力ウィーク2025 セッションレポート 

2025年9月11日、JICA本部で開催された「第5回教育協力ウィーク」にて、特定非営利活動法人Forum2050主催による体験型ワークショップ「次世代と考える『自分ごと』としての平和」が行われました。教育協力ウィークへの参加は昨年に続き2回目で、今回も若者主導で対話を行う形で進められ、小学生から高齢者まで幅広い年齢層の方々に、オンライン形式で参加していただきました。

また、特別ゲストとして、NPO法人日本ウクライナ友好協会KRAIANYの副理事長であるイェブトゥシュク・イーゴルさん、一般財団法人すこやかさ ゆたかさの未来研究所代表の畠中一郎さんのお二人にもご参加いただき、「失われて気づく平和の価値」「日常の中で平和を守る努力の大切さ」について語っていただきました。

詳しくは、Webサイトをご確認ください。https://forum2050.com/2025/09/11/event20250911/

次世代へのメッセージ

セッションの最後には、Forum2050監事の植嶋卓己さん(元JICA理事)から、「平和な未来共創に向けて、日本を含む世界中のこどもたちが主導的な役割を果たしていくために」という観点から、大人・シニア世代の責務について語られました。

「今日の若い皆さんの発言を聞いて、未来への希望を感じました。私たち大人世代は、若者たちが安心して発言し、行動できる環境を整えることが使命だと改めて感じています」

参加者の声

参加者からは以下のような感想が寄せられました。

「小学生から大学生まで、若い世代が堂々とファシリテーションをする姿に感動しました。平和について考えることが『特別なこと』ではなく、日常の延長線上にあることを実感できました」(30代・教育関係者)

「ウクライナの方の体験談は重く、でも畠中さんのお話からは生きる力をいただきました。平和は当たり前のものではないことを改めて考えさせられました」(高校生参加者)

「カンボジアやバングラデシュのこどもたちの動画を見て、世界中のこどもたちとつながっている実感が湧きました」(小学生参加者)

今後に向けて

Forum2050代表の戸田隆夫さん(元JICA上級審議役)は、「このような若者主導の対話の場を継続的に設けることで、平和を『自分ごと』として捉える人々の輪を広げていきたい」と今後の展望を語りました。

このセッションは、教育協力が単に途上国への支援にとどまらず、日本国内の若者の成長と世界への関心向上にも大きく寄与することを示す貴重な機会となりました。参加者一人ひとりが、自分なりの「平和への第一歩」を見つけることができた、意義深いセッションでした。

ジョージア交流会

2025年9月28日にジョージアと日本の交流を実施しました!今回で、8回目の開催となります。instagramにもアップしていますので、ご感想等ございましたらDMまたはHPまでお願いいたします。

https://www.instagram.com/p/DPJDI3GkYAD/?igsh=cTZvc2VsMmQybnZj

ジョージア交流会

メンバーからのメッセージ

မင်္ဂလာပါ(ミンガラーバー)
初めまして。8月からフォーラムの運営メンバーに加わりました、大学3年生の三好華と申します。
いつも温かいご支援をありがとうございます。

本日は自己紹介も兼ねて、私と東南アジアとの出会い、そして2月から6月に参加したカンボジアでの教育インターンシップについてお話しします。

私は大学で、ミャンマーの言語であるビルマ語を専攻しています。冒頭の「မင်္ဂလာပါ(ミンガラーバー)」は、ミャンマー語で「こんにちは」を意味する挨拶です。丸みのある可愛らしい文字が特徴的な言語です。
言葉を学ぶこと、そして東南アジアという地域そのものが好きだったことから、ビルマ語専攻を選びました。

語劇祭の様子
語劇祭の様子(右から四番目が私)

東南アジアに興味を持つようになったきっかけは、高校時代に参加したカンボジア研修にさかのぼります。
当時は「いろんな国に行ってみたい」という好奇心から参加しましたが、キラキラと笑う子どもたち、気さくに声をかけてくれる街の人々、クメール語を優しく教えてくれた学生との交流を通して、カンボジアの人々の温かさに惹かれました。そこから、東南アジアや途上国への関心がぐっと高まりました。

大学では、ビルマ語だけでなく、東南アジア地域の歴史・文化・社会などについても幅広く学んでいます。
そして、入学前から抱いていた「在学中に東南アジアで暮らす」という夢を、今年ついに叶えることができました。

今年の2月から6月の4か月間、カンボジアで教育インターンシップに参加し、現地の方々と共同生活を送りました。
「日本式幼児教育を広めたい」という想いで設立された保育園に受け入れていただき、保育園を拠点にさまざまな活動を行いました。

午前中は保育補助、午後は小学生との活動を行い、空いた時間には日本の絵本の翻訳や教材・製作物の作成にも取り組みました。
保育園には日本人の先生が多く、日本の絵本がたくさんありましたが、クメール語の絵本はとても少なく、クメール語しか話せない先生が子どもたちに読み聞かせをするのが難しいという課題がありました。

そこで私は、「カンボジアの子どもたちにももっと絵本の世界を楽しんでもらいたい」という思いから、絵本のクメール語翻訳を始めました。
学びたてのクメール語での翻訳は簡単ではありませんでしたが、少しずつ取り組み、4か月の間に数冊の翻訳本を完成させることができました。
帰国後も時間を見つけて翻訳を続け、完成したものはデータで保育園に送る予定です。離れていてもできる支援の形を見つけることができました。

また、保育園以外にも、近隣のフリースクールや孤児院、公立小学校などを訪問しました。
フリースクールは寄付によって運営されており、カンボジアの二部制教育を補うため、貧困層の子どもたちが無料で通っています。私は、「普段図工の授業を受ける機会が少ない子どもたちにものづくりの楽しさを伝えたい」「フリースクールの運営に少しでも貢献したい」という思いから、チャリティ活動を企画しました。
子どもたちと一緒に作ったビーズ雑貨を、日本の学園祭で販売する活動です。

最初は、子どもたちの作品をカンボジアや国際協力に関心のない方にも手に取ってもらえるのか、製作費や出店費をまかなえるのか、不安もありました。
それでも、子どもたちの笑顔や、活動を支えてくださった多くの方々の協力に励まされ、無事にやり遂げることができました。
結果として、用意した商品はすべて完売し、約5万円を寄付することができました。

学園祭での販売の様子
学園祭での販売の様子

子どもたちの作品を通して、たくさんの方にカンボジアの魅力を伝えられたことを嬉しく思います。
私一人にできることは小さいですが、こうした小さな活動の積み重ねが、協力の輪を広げていくと信じています。

これからもForumでの活動を通して多くの方と出会い、自分の「国際協力」や「平和」への思いを共有していきたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

Forum2050代表 戸田隆夫からの月例報告

みなさま

長い猛暑が去り、ようやく秋が訪れたかと思えば、もう冬の気配。

皆様におかれては、お元気でお過ごしでしょうか? 

ガザに関しては、生存していた人質が全員解放されたとはいえ、予断を許さない状況が続いています。仮に停戦第二段階への移行ができたとしても、ガザ地区の治政と停戦の監視をそれぞれ誰がどのように担うのか、まったく目処が立っていない状況です。

ウクライナについては、ロシアの侵攻から、3年半を越え、まだ休戦や停戦の見通しさえたっていません。気まぐれな国際世論の関心が遠のく中、現地の人々は疲弊し、ここにおいても、尊い命が奪われ続けています。

世界中の武力紛争(組織化された暴力事案を含む)に関し、世界の主要な研究機関等を総覧すると、今、この瞬間、なんど、100を越える紛争がこの地球上で進行中だとされています。

「人は、なぜ、何のために、殺し合うのでしょうか?」

学校現場でこどもたちに尋ねてみると、

「人間はそもそも闘争する生き物として作られているから仕方が無い」
といった穿ったことを話すこどもたちもいます。おそらく、周りの大人たちがそのように語っているのを聞きかじったのでしょう。

「平和な未来がほしい」
と素直に語るこどもたちも、

「もし、自分の愛する人が隣の国の人に殺されたら、あなたはどうする?」
と尋ねられると、多くの場合、戸惑います。そして、憎しみを露わにする子もいます。

今、世界は、憎しみの連鎖を断ち切ることに失敗し、世界の各地で憎しみの再生産が行われています。
今月(9月)の下旬は、いくつかの学校の現場を回らせていただきました。

そこで発せられたこどもたちの言葉は示唆に富んでいました。「平和」という大きな課題に、真剣に自らの知性を傾けて考えようとしている姿勢をみせてくれたこどもたちもいました。

「自分か、他人か、と問われるなら当然自分が大事だ、という議論を聞くと私は戸惑う。なぜなら、私は、私の愛する人々を(自分なのか他人なのか)どちらに含めたらいいからわからないなるから。私自身の幸せは、私の愛する人々の幸せの中にある。」

「自分か他人か、という問いについては、簡単に答えてはいけない。どんな状況のことなのか、はっきりさせたうえで考えるべきだ。」

これらはそれぞれ小学校6年生と中学校1年生の言葉です。

一般に、(私を含む)大人たちは、こどもたちに「平和」の大切さを語るとき、こどもたちの理解力や知識の限界を忖度して、噛み砕いて易しく話さなければならない、と思っています。知識の点では明らかにそうかもしれないのですが、他方、知識の多寡を前提とせず、平和を巡る、より本質的な議論、人間や人間社会の問題の本質に関する議論を進めようとする際、普通の大人の思い込みを遙かに超えた優れた知性と感性を発揮するこどもたちが少なくない、というのが、学校現場回りを続けている私の率直な感想です。

Forum2050の究極の目標は、世界中のこどもたちが、国境を越え、文化、言語や宗教の違いを超えて結びつき、互いに学び合い、互い他を思いやりながら、平和な未来を共創していくという世界を創りあげることです。そのような世界が、一時の僥倖ではなく、持続可能なかたちで平和を強固なものとし、未来の世代がこれを享受することができるようにすることです。そして、そのために、最新のICTの技術(近年伸長しているピーステックを含む)も駆使して、世界中のこどもたちが知り合い、学び合うためのグローバルなインフラストラクチャー(グローバル公共財)を創設することです。

そのために、今、私たちは、地道に学校現場を回り、あるいは、こどもたちの国際交流を支援しています。それらを通じ、どのようなことをきっかけにして、こどもたちの心は、動き、そして育っていくのか、どうすれば平和な未来の共創への関心や行動意欲が高まっていくのか、についての学びと経験値を積み重ねています。そして、そう遠くない将来、それらの知見や学びをもとに、世界中のこどもたちが、楽しく、興味をもって、安全かつ持続的に交流を続けるためのインフラの基本設計に進んでいきます。

まだまだ長い道のりの、ごくわずかを歩み始めたばかりですが、おかげさまでさまざまな学校・自治体などからお声かけをいただき、この2年間で8千人を超えることもたちと向き合うことができました。埼玉県和光市では、市民とともに作り上げた平和都市宣言を実践したいという強い意向を持つ同市と協働し、市内の公立中学校(全部で3校)の全校生徒(総計約1400人)との対話を行うこともできました。点から線へ、そして、小さいながらも、線から面へ、と活動が拡がりつつあります。このような展開を御報告することができるのも、貴重なご支援をいただいている皆様の御陰です。

改めて深く深く感謝申し上げます。

末筆となりましたが、みなさんにおかれては、秋も深まり、朝夕の冷え込みが冬の訪れを感じさせるこの頃ですが、どうかくれぐれもご自愛ください。そして、これからもどうぞよろしくお願いします。

2025.10.20
杉並区高円寺にて
戸田隆夫
携帯:08058967912
メール:toda@forum2050.com

講演の依頼ニュースレターの登録

Forum2050は、「世界のこどもたち 一人ひとりの未来への想いが人類の未来を創る」をコンセプトに、企業や学校、教育機関等と連携しながら、子どもたちと共に未来の人類社会の平和と発展について、子どもたちが考えるきっかけを創造しています。

目次