次世代と考える「自分ごと」としての平和
2025年9月11日、JICA本部で開催された第5回教育協力ウィークにて、特定非営利活動法人Forum2050主催による体験型ワークショップ「次世代と考える『自分ごと』としての平和」が行われました。
若者主導の新しい対話のかたち
このセッションの最大の特徴は、小学生から大学生までの若者がMCや進行を務めたことです。藤本真綾さん(高校1年生)が全体の司会を担当し、山際貫慈さん(小学6年生)、筑波結花さん(大学2年生)、板谷明香凛さん(大学1年生)、三好華さん(大学2年生)、天谷一葉さん(高校1年生)らが、それぞれの体験を通じて平和への想いを語りました。
参加者は小学生から高齢者まで幅広い年齢層にわたり、オンライン形式で開催されました。
失われて気づく平和の価値
セッションでは、特に印象的な2名のゲストスピーカーからの体験談が共有されました。
NPO法人日本ウクライナ友好協会KRAIANYの副理事長であるイェブトゥシュク・イーゴルさんは、三年半にわたる戦禍に苛まれるウクライナから日本にやってきた体験を通じて、「平和は失われて初めてその価値に気づく」ことの重要性を語りました。
また、一般財団法人すこやかさ ゆたかさの未来研究所代表の畠中一郎さんは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断され余命宣告を受けながらも、社会貢献活動を続けることで絶望から蘇った自身の体験を共有。日常の中で平和を守る努力の大切さについて参加者に語りかけました。
世界のこどもたちとのつながり
セッション中には、カンボジアとバングラデシュのこどもたちが未来への想いを語った動画が上映されました。現地のこどもたちの率直な声は、日本の参加者にとって平和を「自分ごと」として捉えるきっかけとなりました。
動画を見た参加者からは、「同じ年代のこどもたちが、こんなに真剣に未来について考えていることに驚いた」「言葉や文化は違っても、平和への願いは同じなんだと感じた」といった感想が寄せられました。
対話から生まれたキーワード
セッションの中心となったオープン・ディスカッションでは、「私たちはそれぞれどのようなきっかけで、世界に、未来に、そして平和に対して関心を持つようになったか?」という問いから始まり、「より多くの人々が平和な未来の共創により強い関心を持つために、私たちに何ができるか?」について活発な議論が交わされました。
フロアからの意見交換では、平和を築くためのキーワードとして以下のような言葉が寄せられ、リアルタイムでチャットに集約・可視化されました。
- 思いやり・共感
- ユーモア・笑顔
- 知る・学ぶ
- 勇気
- 対話・尊重
- つながり
次世代へのメッセージ
セッションの最後には、Forum2050監事の植嶋卓己さん(元JICA理事)から、「平和な未来共創に向けて、日本を含む世界中のこどもたちが主導的な役割を果たしていくために」という観点から、大人・シニア世代の責務について語られました。
「今日の若い皆さんの発言を聞いて、未来への希望を感じました。私たち大人世代は、若者たちが安心して発言し、行動できる環境を整えることが使命だと改めて感じています」
参加者の声
参加者からは以下のような感想が寄せられました。
「小学生から大学生まで、若い世代が堂々とファシリテーションをする姿に感動しました。平和について考えることが『特別なこと』ではなく、日常の延長線上にあることを実感できました」(30代・教育関係者)
「ウクライナの方の体験談は重く、でも畠中さんのお話からは生きる力をいただきました。平和は当たり前のものではないことを改めて考えさせられました」(高校生参加者)
「カンボジアやバングラデシュのこどもたちの動画を見て、世界中のこどもたちとつながっている実感が湧きました」(小学生参加者)
今後に向けて
Forum2050代表の戸田隆夫さん(元JICA上級審議役)は、「このような若者主導の対話の場を継続的に設けることで、平和を『自分ごと』として捉える人々の輪を広げていきたい」と今後の展望を語りました。
このセッションは、教育協力が単に途上国への支援にとどまらず、日本国内の若者の成長と世界への関心向上にも大きく寄与することを示す貴重な機会となりました。参加者一人ひとりが、自分なりの「平和への第一歩」を見つけることができた、意義深いセッションでした。
【セッション概要】
- 日時: 2025年9月11日(木)18:30-20:00
- 会場: JICA本部(東京都千代田区)
- 主催: 特定非営利活動法人Forum2050
- 参加者: 小学生から高齢者まで幅広い年齢層
- 形式: 体験型ワークショップ

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